ドクターコラムDoctor Column

たかが便秘、されど便秘

 わが国では高齢化に伴い慢性便秘症の患者数が年々増加しています。そのため2017年10月にわが国初の慢性便秘症診療ガイドラインが作成され、個々の便秘治療薬の「推奨度」が明示されました。酸化マグネシウムなどの塩類下剤と新薬である上皮機能変容薬が「強い推奨」となり、わが国で汎用され薬局でも購入できる刺激性下剤は「弱い推奨」となりました。

 酸化マグネシウムは安価で穏やかな効果なものの、腎臓が悪い人や高齢者では高マグネシウム血症が出現したり、骨粗鬆症薬の吸収を阻害したり、胃酸分泌抑制薬を服用している人や胃切除後の人では効果が低下するので注意が必要です。

 上皮機能変容薬には現在2種類あります。いずれも薬物相互作用や電解質異常は起きませんが、やや高価です。また、下痢や吐き気が出現することがあり医師の適切な指導が必要です。

 刺激性下剤は弱い推奨となりましたが、効果は強力です。薬剤耐性による効果の減弱、習慣性や依存性、便意の消失が起こるなどの問題があるため、毎日の連用は避け必要に応じての使用が望ましいとされました。

 便秘治療において一番重要なことが生活習慣の改善であることは言うまでもありません。適切な運動、繊維質と水分の十分な摂取、朝食による腸の動きの刺激、便意を我慢しないこと、適切な排便姿勢(ロダンの彫刻“考える人”のようなポーズ)がポイントです。直腸内にたまった便が、りきみなどの排便困難感を伴わずに完全に排出され、残便感を伴わない排便を完全排便と言います。満足度の高い排便は様々な病気の予防、精神の安定、美容にもつながります。

副院長: 能戸 久哉

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