ドクターコラムDoctor Column

ストレスト社会の胃腸疾患

 ストレスが引き金となって胃腸に障害を起こす人が最近増えています。

 上腹部症状を主体としたものは「機能性胃腸症」と呼ばれ、胸焼け、胃もたれ、腹痛などの上腹部の症状が持続あるいは反復して出現し、排便によって軽快しない特徴があります。
 下腹部症状を主体としたものは「過敏性腸症候群」と呼ばれ、下痢や便秘などの便通異常と、腹痛、腹部不快感、腹部膨満感、腹鳴などの腹部症状が同時に出現し、排便によって軽快する特徴があります。

 原因はまだ解明されていませんが、胃腸の動きのアンバランス、内臓の知覚過敏、性格などの心理的要因にストレスが関与して起こるといわれています。
 両疾患とも一般的な検査(尿、血液、便検査、レントゲンなど)や内視鏡検査でははっきりとした異常がみつからないため、さまざまな症状を訴えても“神経質”“気のせい”“年のせい”“病気ではない”と言われて適切な説明と治療が行われなかったり、治療を開始しても信頼関係が成立していないと十分に満足する効果が得られず、より一層信頼できる医師を求めて“ドクターショッピング”の状態に陥ることもあります。
 症状の軽い人も含めると日本人の約25%が「機能性胃腸症」、約15~20%が「過敏性腸症候群」の症状で悩んでいるといわれており、これらの疾患に対する医療費と“生活の質”が障害されることによる経済的損失は甚大です。

 十分な問診、診察と一般的な検査で診断はほぼ可能なため、必ずしも内視鏡検査は必要ありません。しかし、器質的疾患(癌や潰瘍など)が疑われる場合、患者さんの不安が強い場合、治療効果が思わしくない場合には器質的疾患の除外のために精密検査(内視鏡検査や超音波検査など)を行います。

 治療は、病態の説明による患者医師間の信頼関係の確立、生活指導(ストレスの軽減、ライフスタイルの改善)、食事療法、薬物療法が基本になり、心理療法が有効な場合もあります。

 このような症状でお悩みの方は、一度消化器の専門医に相談してみて下さい。

副院長:能戸 久哉

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