ドクターコラムDoctor Column

過敏性腸症候群の人が知っておきたい食事療法

過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)とは検査で明らかな原因を認めないにもかかわらず下痢や便秘などの便通異常と、腹痛、腹部不快感、腹部膨満感、腹鳴などの腹部症状が続いている状態を言います。若い人に多く、睡眠中に症状がでないことや排便によって腹部症状が軽快する特徴があります。原因はまだ解明されていませんが、腸の運動異常、内臓の知覚過敏、性格などの心理的要因に腸内細菌叢の乱れやストレスが関与して起こるといわれています。下痢型、便秘型、下痢と便秘を交互に繰り返す混合型、分類不能型(ガス型など)に分類されます。
 IBS症状を軽減するための食事に関する一般的な指導として、規則的な食事摂取、過剰に食事を摂らない、ゆっくり時間をかける、十分な水分摂取、冷たいものを摂りすぎないなどがあげられます。食事内容に関しては下記の様な食事を控えると症状が軽減しやすくなります。

●脂質の多い食事

 脂質が身体の中で分解されて出来た脂肪酸が腸を刺激して下痢になりやすくなります。

●香辛料

 赤唐辛子の主成分であるカプサイシンは消化管運動を亢進させ腹部灼熱感や腹痛につながると言われています。胡椒、カレー、生姜、シナモン、ターメリックなども関連があると言われています。

●カフェイン

 大腸、特に直腸S状結腸の運動を刺激しIBS症状を増悪させます。コーヒーは飲み過ぎない方がいいです。

●アルコール

 軽度から中等量の摂取ではIBS症状の悪化との関連性は確認されてはいませんが、短期間に多量のアルコールを摂取した場合には下痢症状が悪化します。

●牛乳や乳製品

 乳糖不耐症のIBSの人は下痢が誘発されます。

●アレルギーの可能性がある食べ物

 IBSの人の中の一部に食物アレルギーが隠れている場合があり、アレルギー物質を含む食事を摂ると腹痛や下痢が起こりやすくなります。血液検査でIgG抗体上昇を認める食品は避けてください。

●不溶性食物繊維

 食物繊維には水に溶ける可溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維があります。食物繊維が便秘症の人に非常に有効であることは周知の事と思いますが、IBSの人は食物繊維、特に不溶性食物繊維(ごぼう、切り干し大根、ブロッコリー、ナッツなど)をとり過ぎると下痢や腹部膨満感がでやすくなることがありますので注意が必要です。

●高FODMAP食

 FODMAPとは特定の糖類をまとめた呼び名です。FはFermentable(発酵性の)という意味で以下の4つの糖質に掛かります。OはOligosaccharides(オリゴ糖)、DはDisaccharides(二糖類)、MはMonosaccharides(単糖類)、Aはand、PはPolyols(ポリオール)の頭文字からなっています。
 FODMAPは小腸で分解吸収されにくく、大腸で腸内細菌により発酵分解されて水素ガスやメタンガスを発生させます。さらに高浸透圧性のため腸の中に水分を引き込む特徴があります。その結果、FODMAPが多い食べ物を摂るとおならが出やすくなる、お腹が張りやすくなる、下痢になりやすくなるなどのIBS症状がでやすくなります。
 欧米ではIBS患者の食事としてFODMAPを多く含む食事を避けることでIBS症状が軽減すると多数報告されていますが、日本人の消化管環境にどのような影響を与えるのかはさらなる検討が必要です。極端な食事摂取傾向にならないように注意してください。あくまでも栄養バランスの良い食事摂取が前提である事を強調しておきます。原因となる食事は個人によって異なりますので、お腹の調子の良い時と悪い時の食事内容をメモして振り返りながら自身にあった食事を探していくのが良いでしょう。

※FODMAPを多く含む代表的な食品
 オリゴ糖:小麦、玉葱、ニンニク、大豆(納豆)、レンズ豆、ひよこ豆などの豆類
 二糖類:牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム
 単糖類:ハチミツ、一部の果物(りんご、もも、すいかなど)
 ポリオール:人工甘味料(ソルビトール、キシリトールなど)、キノコ類
※FODMAPが少ない代表的な食品
 バナナ、人参、じゃがいも、米、豆腐

副院長 : 能戸 久哉

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