ドクターコラムDoctor Column

急性胃腸炎になってしまったら

 急性胃腸炎の原因の多くは細菌やウィルスが胃腸に感染して起こる感染性胃腸炎です。代表的な症状は突然の吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱などがあります。ウィルスとしてはノロウィルスが一番多く、他にロタウィルス、アデノウィルスによるものがほとんどで、冬から春先にかけて増える傾向があります。細菌としては病原性大腸菌やサルモネラ菌、カンピロバクター菌によるものが多く、一般的には夏に多い傾向が有ります。

 急性胃腸炎は世の中にあふれかえった病気で、正常な成人にとっては不快ではあるものの自然治癒する疾患に過ぎません。集団感染が疑われる状況ではなく、症状がひどくなければ適切な水分補給のみで自宅療養していてかまいません。しかし、乳幼児、高齢者、易感染者、重篤な基礎疾患を有する患者の場合には、重症化する可能性がありますので早めにかかりつけ医を受診してください。糖尿病患者さんは内服薬の減量・中止、インスリンの減量の指示を出してもらってください。

 急性胃腸炎になってしまった場合、薬で症状を和らげる以上に正しく水分を摂取する事が重要です。糖分、電解質をバランス良く含んだ常温の経口補水液やスポーツドリンクなどを嘔吐しないように少量ずつ頻回に摂取することが大切です。胃腸の症状が回復し始めたら少しずつ食事を再開していきましょう。乳製品や脂肪の多い食事は避けて消化しやすいおかゆ、うどん、バナナなどから少しずつ食べ始めてください。
 ウィルスが原因であれば有効な特効薬(抗ウィルス薬)は存在しません。また、細菌が原因であっても必ずしも抗菌薬は必要ではありません。下痢に対しては回復を遅らせる可能性があるため下痢止めを処方しない方が良いという考え方が一般的です。乳酸菌製剤も有効であるとのエビデンスは有りません。
 下記の様な場合には受診・再診して下さい。

  1. 嘔気が強く、十分な水分摂取が困難な場合
  2. めまいや立ちくらみ、倦怠感、尿量が少ないなどの脱水症状がある場合
  3. 腹痛が悪化して来たり、腹痛が移動して下腹部に限局して来た場合
  4. 血便、黒色便の場合
  5. 高熱が出た場合
  6. 初診時にはみられなかった新たな症状が出た場合

 急性胃腸炎はほとんどが数日で回復してきますが、上記のような場合には精査治療を要します。点滴や入院治療が必要になることもあります。また、初診時には診断できなかった別の疾患であることもありえます。
 原因食品、病原体別の症状などの特徴、感染経路、予防法、学校や職場への復帰時期については厚生労働省のホームページなどをご覧下さい。

副院長 : 能戸 久哉

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