ドクターコラムDoctor Column

こむら返りを防ぐ

 こむら返りは、主にふくらはぎに起こる筋肉のけいれんで、自分の意志とは無関係に筋肉が持続的に異常収縮し、多くは激しい痛みを伴います。ふくらはぎに多く起こりますが、足の裏や指、太もも、胸など、体のどこにでも発生します。睡眠中に見られるほか、激しい運動中や運動後、長時間の立ち仕事の後などにも見られます。大抵はほんの数分で治まりますが、運転中や水泳中などに起こると重大な危険にさらされることになります。

原因

 筋肉には過収縮を予防するセンサーである腱紡錘が存在します。その働きが低下すると筋肉が異常に収縮しけいれんを起こしてしまいます。
 腱紡錘の機能低下には、様々な原因が考えられます。最も大きな原因といえるのが、ミネラルバランスの乱れです。カリウムとカルシウムは、筋肉の収縮や神経の伝達をスムーズにする働きがあります。この2つのミネラルを調整しているのが、マグネシウムです。多くの場合、マグネシウムの不足が1番の原因と考えられています。
 他に、脱水や冷えによる血行不良、筋肉疲労、加齢により腱紡錘の機能が低下します。50歳以上でほぼ全員が一度は夜間のこむら返りを経験しており、60歳以上の6%が毎晩こむら返りに襲われているという報告もあります。
 こむら返りが運動と関係なく生じる場合や、特に夜間に繰り返す場合、病気に関連して起きている可能性があります。下痢やおう吐による脱水症、熱中症、腎不全(特に透析中)、閉塞性動脈硬化症、下肢静脈瘤、糖尿病、肝硬変、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、甲状腺機能低下症などの疾患、および利尿薬、高血圧の薬、高コレステロール血症の薬などの副作用が背景に疑われます。
 また、妊娠中はミネラルバランスが崩れやすく、腹部が下大静脈を圧迫して循環が悪くなっていたり、体重増加により足に負担がかかり、こむら返りを起こしやすくなります。

予防のためにできること

(1)ミネラル不足に注意

 マグネシウムは海藻類、ナッツ類、そば、ごまなどに、カルシウムは乳製品、大豆製品、小魚などに、カリウムは芋類、果物などに豊富です。サプリメントは過剰になることがあるので食べ物から摂ることが推奨されます。慢性腎不全などで食事制限のある方は担当医に相談して下さい。

(2)運動中、運動後や就寝前は水分補給を

 運動や肉体労働で発汗したらスポーツドリンクなどで、水分とミネラルをこまめに補給しましょう。人間は睡眠中にもコップ1~2杯分の汗をかくので、夜間に起こしやすい人は就寝前にコップ1杯の水を飲むことも有効です。飲酒やコーヒーの摂りすぎでも水分は失われていますので水分を補給して下さい。

(3)体を冷やさない

 素足を避ける。パジャマは長ズボンタイプを選ぶ。ひざ掛けを常備する。就寝時に靴下やストッキングを履くのも予防につながります。入浴時は湯船に浸かり身体を温めましょう。

(4)日頃からこまめにストレッチや屈伸、マッサージで筋肉をほぐす

 運動前後のストレッチ、マッサージは予防に有効です。

(5)重い掛け布団を使わない

 重い布団をかけて仰向けに寝ると、足首の関節が伸ばされふくらはぎの筋肉が収縮した状態となりこむら返りを起こしやすくなります。

(6)ハイヒールなどの疲れやすい靴を避ける

応急処置と治療薬

 こむら返りが生じた場合には、落ち着いて収縮した筋肉をゆっくり伸ばし、少し保持したあとゆっくりと戻します。これをけいれんが治まるまで続けます。治まったら患部をほぐすようにやさしくマッサージをし、水分も補給して下さい。就寝時のこむら返りにはお湯や蒸しタオルなどで温めるのも有効です。
 薬物療法としては、筋弛緩薬、抗けいれん薬、芍薬甘草湯などを使います。特に芍薬甘草湯は予防にも治療にも有効でよく処方しますが、高血圧や低カリウム血症のリスクがあるので常用には注意を要します。

副院長 : 能戸 久哉

このページの先頭へ