ドクターコラムDoctor Column

気管支喘息 診断と治療

 わが国の喘息患者数は1000万人といわれています。
 喘息の有症率は、小児では減少傾向ですが、成人では増加傾向にあり、特に中高年発症が多くなっています。
 喘息発作の起こりやすさには季節変動があり、春と秋に発作の回数や程度が悪化します。また花粉症があると、喘息が悪化しやすいことが知られています。
 今回は喘息の診断と治療について解説します。

《診断》

 喘息の診断にはまず喘鳴、咳嗽、喀痰、胸苦しさ、息苦しさ、胸痛の有無の確認が大切です。
 下記の問診チェックリストで、大項目+小項目(いずれか1つ以上)があれば喘息を疑います。
 次に胸部レントゲン検査で器質的な肺疾患を除外した後、中用量以上の吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬との配合剤(吸入薬)を試します。症状の改善があれば喘息と診断されます。
 補助検査として呼吸機能検査(1秒量)、呼気中一酸化窒素濃度、血中好酸球数を測定する場合もあります。

<問診チェックリスト>
大項目 喘息を疑う症状(喘鳴、咳嗽、喀痰、胸苦しさ、息苦しさ、胸痛)がある.
小項目 症状 1. ステロイドを含む吸入薬もしくは経口ステロイド薬で呼吸器症状が改善したことがある.
2. 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を感じたことがある.
3. 3週間以上持続する咳嗽を経験したことがある.
4. 夜間を中心とした咳嗽を経験したことがある.
5. 息苦しい感じを伴う咳嗽を経験したことがある.
6. 症状は日内変動がある.
7. 症状は季節性に変化する.
8. 症状は香水や線香などの香りで誘発される.
背景 9. 喘息を指摘されたことがある.
10. 両親もしくはきょうだいに喘息がいる.
11. 好酸球性副鼻腔炎がある.
12. アレルギー性鼻炎あがる.
13. ペットを飼い始めて1年以内である.
14. 血中好酸球が300/μL以上.
15. アレルギー検査(血液もしくは皮膚検査)にてダニ、真菌、動物に陽性を示す.
大項目+小項目(いずれか1つ以上)があれば喘息を疑う

《治療》

 治療の目的は症状の改善と症状の発現を予防することです。
 自己判断で薬を中止せず、減量、中止は主治医と相談するようにしましょう。
 治療は吸入薬が中心で、中用量以上の吸入ステロイドと長時間作用性のβ2刺激薬の配合剤から開始します。
 症状の改善が不十分の場合はステロイド、β刺激薬、長時間作用型抗コリン薬の3剤が配合された吸入薬への変更や、ロイコトリエン受容体拮抗薬(経口薬)を追加します。
 それでもコントロールが不良の場合は、高用量の吸入ステロイドを配合した吸入薬への変更や、経口ステロイド薬あるいはステロイド薬の静注を追加する場合もあります。
 3~6か月間喘息症状がなく、呼吸機能(1秒量)が正常の場合、薬の減量や中止が可能です。

院長 : 能戸 徹哉

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