ドクターコラムDoctor Column

帯状疱疹はワクチンで予防できます

 帯状疱疹とは水ぶくれを伴う発疹が、多くは腕、胸、背中に、ときに顔や首などに、左右どちらかの皮膚に帯状にでる病気です。強い痛みを伴うことが多く、症状は3~4週間ほど続きます。帯状疱疹の皮膚症状が治った後も、約2割の患者さんが、何ヶ月、時には何年もつらい痛みが残ってしまう帯状疱疹後神経痛に移行します。まれに合併症による後遺症が残ることがあります。目の合併症による視力低下、失明、耳の合併症による難聴・耳鳴り・めまいなど、ほかにも様々な合併症があります。

 帯状疱疹の原因は水痘・帯状疱疹ウィルスです。このウィルスにはじめて感染した時は水ぼうそうとして発症します。治った後もウィルスは長い間体内に潜んでおり、普段は免疫力によって活動が抑えられています。加齢、疲労、ストレスや糖尿病・癌などの疾病で免疫力が低下するとウィルスが暴れだし帯状疱疹を発症します。
 日本人成人の約90%以上はウィルスが体内に潜伏していると言われています。帯状疱疹の発症率は50歳代から急激に高くなります。帯状疱疹患者の約7割が50歳以上です。日本では、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になると言われています。

 幼少期に獲得したウィルスに対する免疫は年齢とともに弱ってしまうため、ワクチン接種で免疫を強化し帯状疱疹を予防します。ワクチンにより、帯状疱疹の発症率の低下、発症した場合の痛みなど重症度の軽減効果、帯状疱疹後神経痛の発症率の低下が確認されています。
 水ぼうそうにかかったことのない方は、帯状疱疹の予防接種は必要ありません。しかし、水ぼうそうにかかっても症状が出ない場合があり、この場合も帯状疱疹になる可能性があります。抗体検査をして調べることもできますが、時間と費用がかかりますし、一般的には免疫を確かめることなくワクチンを接種しても差し支えありません。また、帯状疱疹は約6.4%に再発が認められると言われていますので、帯状疱疹にかかったことのある方も再発予防として有効です。50歳以上から接種することが可能です。

 帯状疱疹ワクチンは、現在2種類あります。有効性、接種対象、接種回数、副反応や費用などに違いがあります。

①弱毒生水痘ワクチン(商品名:ビケン)

 1回の接種で済みますが、予防効果は約50~60%で、5年を超えると有効性が低下します。生ワクチンですので、免疫機能に異常のある疾患を有する方、免疫抑制をきたす治療を受けている方(化学療法中、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤による治療中)、妊娠をしている方には接種できません。接種費用は8500円です。

②不活化ワクチン(商品名:シングリックス)

 2カ月間隔で2回接種が必要ですが、予防効果が約90%以上と高く、効果も9年以上持続します。免疫抑制状態の方でも接種可能です。弱毒生水痘ワクチンに比べて接種部位の痛み・発赤・腫れや全身の筋肉痛・倦怠感などの副反応が強く出ますが、重篤なものはほとんどないと言われています。欧米では弱毒生水痘ワクチンより接種が推奨されており、高齢者への推奨ワクチンとなっています。
 接種費用は1回22,000円(2回接種で44,000円)と比較的高額です。

 

 どちらを選ぶかは個人の選択になりますが、簡単に言うと、長期間の高い予防効果を重要視したいという方は不活化ワクチン、費用や副反応の面を懸念される方は弱毒生水痘ワクチンということになります。どちらが良いかお悩みの方はお気軽にご相談ください。

副院長:能戸 久哉

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