ドクターコラムDoctor Column

健康診断で腎機能障害を指摘されたら

 健康診断で腎機能障害や腎機能低下を指摘さたことのある方もいると思います。
近年、腎機能に関する関心が高まっており、慢性腎臓病(CKD)という疾患名で治療を受けている方もいるでしょう。
今回は、慢性の腎機能障害に関して解説します。

1.腎臓の機能

 腎臓は腰の高さで、背中側に左右1個ずつある臓器です。体で産生された老廃物を排泄する働きがあります。
大動脈から入ってきた血液は腎臓内にある毛細血管の塊(糸球体)で老廃物や水分が濾過され、必要なものは再吸収されます。また、造血ホルモン(エリスロポエチン)も産生し、骨代謝に必要なビタミンDの活性化にも関わっています。
体の老廃物であるクレアチニンは腎機能が正常であれば腎臓からほとんど排泄されるので、血中クレアチニン値が高い場合は腎機能障害が進行していると判断されます。現在は、年齢や性別を考慮に入れた指標(推算糸球体濾過量:eGFR)が使われる事が多く、eGFRは血中クレアチニン値とは逆で、腎機能が悪化すると値は低下します。90以上あれば正常です。また、正常な腎臓からは血液中の蛋白は漏れないので、尿中蛋白の量を測定し、多ければ多いほど腎機能の悪化を意味します。eGFRと尿中蛋白量から判定される腎機能障害が3ケ月以上持続すると慢性腎臓病(CKD)と診断され、両指標(eGFRと尿中蛋白量)の値によって、腎機能障害の重症度も明らかになります。
次の表を参照してください。

CKDの重症度分類

2. 慢性腎臓病の原因

 慢性腎臓病の原因は様々ありますが、代表的なものは、糖尿病、高血圧症、慢性糸球体腎炎(徐々に糸球体が破壊される)です。一般検査で、原因が明らかにならない時は、超音波、CT、MRI等の画像診断検査や腎生検(腎臓の組織を採取)を行うこともあります。

3. 慢性腎臓病の症状

 腎機能障害が軽度の時は、自覚症状はほとんどありませんが、一定以上腎機能が障害されると、夜間尿、倦怠感、下肢のむくみ、食欲低下、貧血症状等が認められるようになります。慢性腎臓病は自然に軽快することはほぼ無いので、症状が出現する前に治療を開始することが重要です。

4. 慢性腎臓病の治療

 原因になっている疾患を治療することが最優先です。治療には食事療法と薬物療法が中心になります。原因が高血圧症であれば塩分制限を、糖尿病であれば糖分制限をすることになります。また、原因が何であれ、摂取蛋白質量を制限する事も重要です。腎機能が低下すると、蛋白質が代謝されてできる老廃物が腎臓から排泄されづらくなり、体内に蓄積し、腎機能の悪化を進めてしまうからです。
 薬物療法では、悪化した腎機能を取り戻す特効薬は現時点ではありません。原因疾患が明らかな場合は原因疾患を改善する薬物が最も重要です。最近、慢性腎臓病の悪化スピードを抑制することが実証された薬物(SGLT2阻害薬、MR拮抗薬)があり、早期にこれらの薬を使うのも良い方法でしょう。

 健康診断書のコメントに腎機能の要再検査や要精密検査と書かれた方は、早めに検査をすることをお勧めします。

院長 : 能戸 徹哉

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